私は、今年の5月まで1年間「一新塾」と言うところに通っていました。そこには社会企業家や将来の政治家を目指す大学生や20代の会社員もたくさん参加していました(私は、社会企業家の方のプロジェクト活動の話を聞くのが目的でした)。来ている方の多くは、「自分が社会のために何ができるか考えたい」とか「社会貢献活動をしたい」など、私の若いころを振り返ったら、穴があったら入りたい(幸い穴がなかったので入らずに済みましたが)くらいの、しっかりとしたことを考えている若者がたくさんいました。私が20代のころ考えていたことなんて、とてもここでは書けません。利他主義的な心のレベルの高い若者が増えているようなきがしています。
しかし、本人の責任ではありませんが大切に育てられ豊かな社会に育ったため、大きく2つの問題点があると感じています。1つ目は失敗体験が少ないこと。そのためリスクを出来るだけ回避しようとします。2つ目は、長くなるので来月に回します。
10月号の「致知」の中でプロ車椅子陸上選手 廣道純氏が「子どのうちから壁にぶち当たりまくったほうがいいと思うんですよ。その中で、人間は失敗して当たり前だということを悟れるし、それを乗り越える知恵が得られると思うんです」と話されています。大きな挫折を経験しないまま育ってしまうと、一度でも挫折を経験すると、駄目だと思ってしまいます。人はたまには風邪をひいたほうが、免疫機能が強化されてイイらしいですよ。
◎育成方法 エンパワー・マネジメントとエンゲージ・マネジメント
現実の環境として、豊かさの中で育ったゆとり世代が社会に出てきています。否応なく、企業は存続するために、新人の育成をしていかなければなりません。育成方法は大きく分けてエンパワー・マネジメントとエンゲージ・マネジメントの2種類があると考えています。対象の変化に合わせて育成方法も変化していく必要があります。
★マネジメント手法の変化
少し前までのマネジメント手法は、「エンパワー・マネジメント」が主流でした。若手に権限をできるだけ早く与え、責任ある仕事を任せ、やる気を出させて仕事に取り組ませる手法です。しかし今は「責任を持ちたくない」「リスクをとりたくない」「余計なことはしたくない」などと考える人が増えており、通用しなくなってきています。
最近のマネジメント手法は、私は「エンゲージ・マネジメント」だと考えています。エンゲージとは、「喜ばす」「引き付ける」「深く関わる」などの意味が含まれています。仕事を任せるのではなく、ほめたり、認めたりしながら、徐々に育成していく手法です。
・エンパワー・マネジメント…ライオン型
「獅子はわが子を千尋の谷に突き落とし、這い上がってきた強い子供だけを育てる」漫画「巨人の星」からの知識です(古いですかね)。どうやらそんなことはしないらしいでが、要はスパルタ式に厳しくビシビシとしごいて、その中で残った人だけを育てる方法です。しかし今この育成方法を行うと、現実的には会社をやめてしまう人がたくさん出てしまいます。採用の時に、よっぽどその環境でも耐えられるような人間だけを採用するか、止めていく人数を計算して、大量に採用するか選択する必要があります。しかし、そうした新人の絶対数は少ないでしょうし、またネットで情報が広がる時代に、あまり露骨に行うことは、今後の採用活動自体が困難を極めてしまいます。
新人研修で最初に「地獄の特訓」や「自衛隊での研修」を導入する企業が最近増えているようです。はじめの段階で厳しい環境に置くことは、後の研修が楽に感じられる効果を考えると有効です。最近の若者は、偏差値教育などで、親や学校など周りから能力の限界(リミッター)を決められて育ってきています。しかし、周りが決めた能力の限界などはあるはずがありません。一度厳しい環境を克服して、リミッターを外す経験をすることで、自分の可能性の広がりを感じられるのではないでしょうか。
・エンゲージ・マネジメント…コアラ型
コアラの母親は未熟でうまれてくる子供を、最初は袋の中に、次はお腹や背中につかまらせて、ひとり立ちできるまで大切に育てます。何から何まで、手取り足取りで育成する方法です。非常に手間がかかる上、育てるほうの人間に忍耐が要求されます。しかし、現実を見た場合、大切に育てられてきた子供たちが多いですから、この方法をとらざるおえない環境になっています。
従来のビシバシ型のマネジメントで育ってきた上司の「会社は学校や遊び場ではない。甘ったれてもらっては困る」という意見はよく聞きます。正論だとは思いますが、正論が必ずしも効果的な訳ではありません。企業ですから、いくら正論を言っても、現実的に実績につながらなければ、それこそ何の意味もありません。マネジャーとして部下の育成と会社の業績を上げることがミッションであるなら、そのために必要なことを考えて行うことが役割のはずです。
・マネジャーの憂鬱
マネジャー受難の時代といわれています。責任感があり、一生懸命に部下を鍛えて何とか早く一人前にしようとする熱意ある管理職ほど、若手にスポイルされて自信を失ってしまっています。管理職へのメンタリング・サポートも必要とされる時代になってきました。企業はその問題の解決策として、コーチングやコミュニケーション研修を強化したりしています。しかしこの問題は、そうしたスキルだけでは解決できません。対象の若者の分析と認識が必要です。そのうえで採用方法や新卒研修など複合的に解決策を考える必要があります。とりあえず、新人の変化と育成方法の変化を意識するだけでも、幾分かは心の救いになるのではないでしょうか。
<余談1>
2010年8月26日は、マザー・テレサの生誕100年にあたります。なにか映画がやっていないかと検索しました。石川県ではたくさん開催されていましたが、あいにく近くでは見つかりませんでした。マイDVDのオリビア・ハッセイ主演の「マザー・テレサ」を見ます。メル・ギブソン監督の『パッション』と合わせて、私の大切なDVDです。
http://www.nsknet.or.jp/~kmg/teresa03.htm
<余談2>
前にお金に対する考え方を書きましたが、ヘンリー・クレイ・リンドグレン「お金の心理学」の中に、お金に対する態度についてのアンケートが載っていました。
1.お金は諸悪の根源である
2.現代社会が何事についても上手く機能するには、絶対にお金が必要である
3.社会病理的問題は、大部分お金がみとで引き起こされたり悪化したりするものである
4.雇われている人が雇用に対して追っている責務は、金銭的価値にあると考えるのが妥当で
ある
5.人間関係にお金を持ち込むのは、必然的にその関係を悪化させることになる
6.お金のある人は、お金のない人より幸福になる可能性が高い
7.究極的には、お金が不潔なものか、不潔さを象徴したものである
8.西欧社会の経済民主制はすべて、お金によって可能となっている
9.理想社会を確立するには、貨幣制度の廃止が前提条件である
10.地位体系が必要な場合、お金はその適切な基礎となる
11.お金が関係してくると何事も汚れたものになる
12.お金のおかげで、世の中はよりよくなる
質問のステートメントは、奇数項目がお金に否定的傾向の質問で、偶数項目は好意的傾向の質問です。お金に対する考え方を、セルフチェックしてみるのも面白いのではないでしょうか。 私の友人が、「お金の出来る仕組み」のユーチューブの情報を送ってくれました。金融工学やビル・トッテン氏の近署「アングロサクソン資本主義の正体」にも書かれている「お金の信用創造」の説明です。ご興味ある方はご覧ください。