12人芯経営論 ・・・目標設定方法

2010/07/15 浅見 淳一

◎ トップダウン・アプローチ
まず、最初に将来の達成したい最終目標を設定して、そこから徐々に現在に近づきながら、途中途中に1つ上の未来目標が達成できる目標を設定します。より詳細に目標達成の日付を設定することにより、その目標達成するための具体的な活動が定義できます。野球選手のイチローは小学生の時から大リーグを目指し、元サッカー選手の中田は、小学生の時から、Wカップを目指すと作文に書いていました。最終目標に至るまでの過程として学生時代のクラブ活動からプロ活動への目標設定をしていたはずです。高い目標到達のために必要なスキルや知識やノウハウの習得には長期の時間が必要ですから、早い段階から目標設定をしたほうが有利です。
最終目標までのプロセスには、当然多くの障害が発生し、不断の努力が要求されます。ですから、一番重要なのは、目標設定や達成するための手法ではなく、その目標が、心から達成したいもの、諦めずに継続して努力し続けられるものであるかどうかです。

メリット:初期の段階から最終目標がはっきりしているため、ぶれない
途中経過は、目標達成の為のプロセスであるため、逆境の時も前向きになれる
デメリット:現状と最終目標がかけ離れているため、現実感が持ちづらい
最終目的を持ち続けるために、強い願望と意志が必要とされる

◎ ボトムアップ・アプローチ
まず、現在の状況から将来を考えて、現在に近いところから達成可能な目標を設定していきます。現状の自分から少しずつプラスしていくというアプローチ方法です。現在の自分から、頑張れば達成できる範囲の目標を設定していきます。
下のチャートの△の中に達成目標を書いてみてください。各目標までの達成期間は人それぞれです。年が経過するほど達成可能な目標が増えていきます。しかし三角形の中で一番重要なのは、頂点の三角です。具体的に「今何をするか」です。実際に人が何か活動できるのは、過去でも未来でもなく今だけです。将来の為に今できることからはじめます。
デール・カーネギーの「道は開ける」の中の「今日、一日の区切りで生きよ」で『今日一日だけは、一日の計画を立てよう。処理すべき仕事を一時間ごとに書き出そう。予定通りには行かないかもしれないが、ともかくやってみよう。そうすれば悪癖―拙速と優柔不断から縁が切れるかもしれない』と書いています。

メリット:比較的達成が容易な目標設定になり、達成感が得やすい:
具体的な目標が設定しやすい
デメリット:直近の活動に注力してしまい、最終目標への意識が薄くなる
最終目標の設定が、達成する可能性が高い選択になり、小さなものになる

・ 人の可能性
前に児童教育で有名なアメリカのスポック博士の言葉「世界で、たった1人でいいから、その子を絶対的に信頼して、褒めてくれる人がいたら、必ず素晴らしい優良児になる。問題児というのは、愛する言葉、褒められたことがないことからおこる」をご紹介しました。先日ビジネススクールのOBOG会で、ユーチューブの中の似た話を教わりました。「先生、可能性のない人なんていない」です。もしご存知無ければ、是非是非ご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=vatH6okFwW8

12chの「カンブリア宮殿」にも出演されていたソフトバンクの孫社長が2011年の新卒に向けて、今までの経歴や志を語っています。その中で「登りたい山を決める。これで人生の半分が決まる」と述べています。0からたった30年で今の規模の会社になりました。ソフトバンクのロゴマークは、坂本龍馬の海援隊の旗印からとったとはじめて知りました。
http://www.softbank.co.jp/ja/info/vision/message/2010/20100416_01/

インターネット、デジタル技術の進歩により第二の産業革命が起きています。急速に時代が大きく変化しています。変化に対して「留まろうとする人」「流れに乗ろうとする人」そして一部の天才的な「変化を起こそうとする人」がいます。孫社長は、まさに変化を作り出そうとしています。そのベースにあるものは、志や信念だと感じました。

<余談1>
知り合いが中国で3億人の検索ユーザーを持っている『百度』の陳駐日首席代表の講演に招待してくれました。百度は中国最大の検索サイトを運営しており設立10年で時価総額2兆円の企業です。中国では現在富裕層が1億人いるといわれています。今後さらに増加します。日本は中国とのビジネスを視野に入れざるおえない状況です。現在日本のコンビニや居酒屋さんでは多くの中国の若者が働いています。しかし3年後には日本の若者の多くが中国で働くことになっていると思います。
陳社長の話は経歴や考え方も興味深いものがありました。ひとつは常に自分のキャリアプランを考えて、仕事を選択してきたという話。もう1つは、自分の得意分野を持ち、それに磨きをかけるという話でした。陳社長の得意分野は「インターネット」と「会社の立上げ」だそうです。百度の前までに8社を立上げ成功させてきた実績があって今があります。「専門分野・得意分野を持てば、自然と人脈もできる」と言っていました。
月刊誌「致知」(本当に素晴らしい雑誌です)のメルマガで「世に五交」という概念があること知りました。
一を勢交(勢力者に交を求める)。
二を賄(わい)交(財力ある者に交を求める)。
三を談交(能弁家に交を求める)。
四を窮(きゅう)交(困窮のため苦しまぎれに交を求める)。
五を量交(利害を量[はか]って得な方に交を求める)。
いずれも恥ずべきもので長くは続かない。と書いてありました。
世間でよく言われる「人脈」とは、そのようなものが多いと思います。自分の利益の為にメリットのある人と知り合おうとする考え方です。そんなものは、たかりの精神構造と大差ありません。陳社長の言われた「まず自分自身が相手にメリットのある人間になる」ように自分を高めること。そして、自分自身が他の人の人脈になることが、真の人脈作りの出発点です

<余談2>
今月の映画は、「レイルウェイズ」を見ました。善良な映画でした。49歳で大企業のエリートを捨てて、電車の運転手になった男の話です。私と主役(中井貴一さん)とでは、エリートであることと格好いいことは随分違いますが、経歴で似ているところもあり共感できました。仕事が大切だとか、忙しいとか、いないと仕事が回らないなどと思い込んでいるのは、企業を離れてみると、自分自身を重要だと思いたい願望の裏返しだと理解できます。その証拠に常に会社は人が入れ替わりますが、何事もなかったように、日々の活動は継続されています。
映画では、都会の生活は競争社会で常に何かに追いかけられているようで、人の心も殺伐としています。一方、田舎は、時間もゆっくり流れており、人の心も優しくてゆとりがあるように描かれています。確かに現実に近いと思いますが、人はどのような環境にいても、考え方1つで、自分の気持ちや受け止め方を変えることができるはずです。私は優しい都会であって欲しいと強く願っています。