人や組織にはビジョンが必要だといわれる。これについて、カール・ワイクが面白い話を紹介している。
冬場のスイスでのことだ。ハンガリーの軍隊が冬場のアルプス山脈で軍事演習をしていた。小隊のリーダーが、凍てつくアルプス山脈に偵察隊を送り出した。その直後から雪が降りだし、二日間やまずに降り続け、偵察隊は消息を絶ってしまった。リーダーは、自分の部下を死に追いやったのではないかと思い悩んだ。三日目になって偵察隊が戻ってきた。彼らはどこにいたのか? どうやって、道をみつけたのか? 彼らがいうには「われわれは道に迷ったとわかって、もうこれで終わりかと思いました。そのとき隊員の一人がポケットの中に地図をみつけました。おかげで冷静になれました。われわれは野営し、吹雪を耐えました。それから地図を手がかりに、帰り道をみつけだしました。
それで、ここまで帰り着きました」リーダーが、命の恩人となった地図を手にとってじっくり眺めると、、なんと、その地図はアルプス山脈の地図ではなく、ピレネー山脈の地図であった。
このエピソードが教えるのは、ビジョンがあれば危機を乗り越える力がわく。これには、個人の(組織ならメンバーの)動機づけが高く保たれることが大きい。個人(や組織のメンバー)に生き抜く勇気を与える。仮にそのビジョンが正鵠(せいこく)を得たものでなかったとしても、ということであろう。プロジェクトでも、計画に完璧を期すより、大まかなベースライン(基準計画)で開始することが重要だということだ。
ワイクは、ビジョンが「人々を元気づけ、人々を方向付ける。人々はいったん行動を起こしはじめると、目に見える成果が生まれ、次に何をすべきかがみつけやすくなると指摘している。」