Time is Money と言う言葉がありますが、よく考えてみるとビジネスの本質を表現しているような気がします。時間をビジネスにしたケースとしては、最初にスタートしたときのコンビニエンス・ストアがあります。文字通り通常10:00-20:00ぐらいだったリテール・ビジネスの時間帯を7:00-23:00に変えたことです。
わたしたちのようなトレーニング・ビジネスも講師として受講者の方たちに、知識や考え方を紹介するために、膨大な量の情報を選別し文献を調査し経験を通して、そのエッセンスを講義の中で提供することになります。もし受講者の方たちが自分でそれを実行するとなると大きな時間を要しますので、その時間を受講者はセミナーとして購入されるということになります。時間は生活者にとってもっとも貴重な資源ですので、時間がお金になるということは基本的なセオリーといえます。お金はひとによってバラツキがありますが、時間は全員が平等に所有しております。その時間価値には強弱がありますが、時間価値をビジネスにすることは合理的といえます。化粧品のビジネスにおいて注目されているアンチ・エージングの考え方も抗加齢ということで、時間が関わっています。ビジネスの進化の過程でt〈トン〉- kg-g-mg-ウェイト・レスと単位と価値が変化していくと言われています。国家の米といわれた鉄はトン単位のビジネスであり、マイクロソフトなどのソフトウェア・ビジネスはウェイト・レスということになります。同じように時間も単位、時間価値が変化していきます。Year―Month―Day―Hour―Minute―Second―Nanosecondというようにビジネスが変化していきます。大規模建築のようなYear単位のビジネスから、インターネットのアクセス、検索のようにSecond単位のビジネスも考えられます。今回ジャスコが展開している「医療モール」の試みは時間と空間とパラダイム・シフトを組み合わせた新たな試みと言えます。従来の個人病院をジャスコの中に集中して開業してもらうということで、ホスピタル・コンプレックスということでしょうか。従来の個人病院は半径500mが商圏ですが、医療モールの医院は半径20kmと広がります。
従来は日曜日は休院でしたが、医療モールは土、日がもっとも忙しくなります。従来は待合室での待ち時間はせいぜい雑誌を読むくらいだったのが、携帯電話と連動して待ち時間の間にショッピングを楽しむことが出来ます。これもTime is Moneyのひとつかもしれません。従来は急性疾患がメインでしたが、医療モールの方は慢性疾患がメインとなり確実な来院頻度が見込める固定客の発想となります。これは医院にとってはパラダイム・シフトでありビジネスのウェイトの変化になります。従来「医は仁術」といわれ、ビジネス感覚のなかった医療の分野にも人口減少、少子高齢化の環境変化を受けて、倒産する可能性もあるという危機感が新たな試みを生み出しています。その中のキーワードの一つがTime is Moneyです。厳しい状況にある流通業界の中で元気なビジネスを展開しているイオン・グループもパラダイム・シフトとTime is Moneyを実践しています。第一に出店政策として「タヌキ、キツネの出る場所に出店しろ」と言われています。「タヌキ、キツネの出る場所」ということは人のいないところに店を出すということになります。20-30年前には販売業が人のいないところに店を出すことは考えられませんでした。繁華街というくらいですから、もともと人の集まるところに店を出すというのが、いままでのパラダイムです。「タヌキ、キツネの出る場所」ということは、人のいないところに人を集めるということです。
それが可能となったのはモータリゼーションの発達が寄与しています。砂漠の真ん中にラスベガスを作るようなものです。第二にTime is Moneyのポイントは単なる物販のGMSと言う形態から さまざまな仕掛けを考案し 来店者の滞留時間を増やすということになります。滞留時間の増加に伴い客単価の増加が見込めるということです。Timeが売上げに比例しています。
エッセイ
Time is Money
2006/05/17 香月 秀文