数年来、御茶ノ水にある大学の付属病院で外来患者として歯科治療を受けている。初めの頃は医師でなく学生の方に診てもらっていた(もちろん、希望すれば直接医師に診てもらえるが、その場合は治療開始までに待機期間がある)。
大丈夫か?と思われそうだが、全く大丈夫なのである。それは、治療の節目ごとに、担当の教官役の医師が来てチェックする。その分、時間がかかるということはあるが、「教育」のひとコマであるから、かえって確実ではないかとさえ思う。教官と学生の一対一の教育現場そのものである。あるときこんなことがあった。教官のチェックで、少し不十分な治療が見つかったらしい。そういう場合はその場で実地に教官が追加の措置をおこなう(同時にこれが学生に対する教育になっているわけである)。その際、治療の道具が足りなかったらしく教官が「きみ、○○の3番を持ってきて」と指示された。それに応えて学生が持ってきたのは、「3番をはさんで、2番と4番、サイズの異なる、連続した三つの種類の○○」であった!「お、きみはよく気がつくな」これがその教官のつぶやきであった。企業の現場では久しく見られなくなった一対一の教育現場と、打てば響く関係に、頭上で接して感動した。
プロジェクトマネジメントは平たく言えば「段取り術」である。「仕事上手は段取り上手」、「段取り八部に実行二部」など先達の残した格言はPMBOKに勝るとも劣らないはずである。プロジェクトの完了形は誰も見たことがなく、お手本も無いなかで仕事を進めていくにはその段取り(ベースライン)をよく考えていくことが必要不可欠である。また、そのためのツールやテクニックも開発済みである。出たとこ勝負でなく、「よく気がつく」という身近な態度も必須のスキルとして磨くべきであろう。
この病院では、昨年には親知らずの移植手術を受けた。経過はきわめて良好・快調であり、そのときの段取りの的確さと手術のスムーズさにも感銘を受けた。別稿で、ご紹介できる機会があればさいわいである。歯科治療は楽しい。