私がインテルに勤務していたときのことです。インテルの調達チームは、業界最強といわれていました。マイクロプロセッサー“ペンティアム”の量産で立ち上げでのフェニックス、アルバカーキ、ポートランド(いずれも米国)、ダブリン(アイルランド)、エルサレム(イルラエル)などのインテルの工場と日本の半導体製造装置メーカーに頻繁に出向き、インテルが調達する装置のスペックの打ち合わせや選択、価格交渉、製造工程の監視コントロールなどに打ち込んでいました。
インテルから見ると、日本の半導体製造装置メーカーとのやり取りはとかくスムーズには進まない。そこで、発注者であるインテルの現場エンジニアから上層部まで多数の人に、「日本の半導体装置メーカーとの関係をもっとスムーズなものにするために、相手方に何を期待するか?」という質問をしてみました。そのとき出てきた多くの発言を集約したのが“Acknowledgement, Commitment, Results”の3語です。
“Acknowledgement”とは、「あなたの言うことを聞いてます。言うことはわかりました」という意味です。これを明確に伝えると、顧客側は「そうか、こっちのいうことはわかってもらえた。今、検討してくれてるんだ」と心の中でうなづく。これがコミュニケーションの第1歩で、国際ビジネスでは(日本の基準より)やや大げさにやる必要がある。
次に“Commitment”では、「私がやります。いつまでに」と明確に表現する。Commitment は単なる口約束(英語では Promise にあたる)とは異なり、それなりの責任がともなう。日本でよく「コミットした」などと言いますが、英語ではしっかり検討してから発すべき言葉です。ある翻訳者がCommitment を「武士に二言はない」のイメージと説明されています。その通りでしょう。ここで、Commitment の根拠としてしっかりした「プロジェクト計画書」を提示すれば、顧客の信頼が増すことは請け合いです。
そして、最後は“Results”です。Results(結果)というと、それではプロセスはどうでもいいのかなどと不毛な反論をもらうことがありますが、とんでもない。しっかりしたResults を生み出すには、頑健なプロセスがなければならない。しかし、売り手内部のプロセス(例えば、プロジェクト・マネジメント)は責任ある売り手ならしっかりやっているのが当然です。
エッセイ
“Acknowledgement, Commitment, Results”
2006/03/13 中嶋 秀隆