テイラリングの成功例

2017/08/15 中嶋 秀隆

『PMBOK®ガイド』はプロジェクトマネジメントのガイドラインを示すものであるが、有効に活用するには「テイラリング」が不可欠である。「テイラリング」をは、端的にいうと「取捨選択と肉づけ」のことだ。身近な成功例を2 つ紹介しよう。大学と企業で本当にあったことだ。

 ある大学の理工学部で 4 年生諸君に「プレゼンテーション技法」の講義をさせていただいて 19 年になる。最初の時期に講義のアレンジをされた先生方が、4 年生全員の卒論の中間発表をプレゼンテーションで行わせることとし、それから毎年、秋に実施している。それには先生方が私どもの講義の要点を集約してオリジナルのチョックリストを作られた。それを全員に配り、その場で活用して、効果を上げている。

 ある大企業では 2 人のベテランが私どもと協力して「プロジェクト・チームに参加する際に知っておくべきこと」という社内向けセミナーを立ち上げた。PM の標準ステップに 2 人のベテランの知見を融合させ、すばらしいものになった。受講生のフィードバックの上々で、ご本人たちも「30 年前の自分に受けさせたい内容」という出来ばえである。

 セミナーを提供する立場からいうと、標準セミナーの受講後、受講者の対応は 2 つに分かれるようだ。すぐれた受講者は「標準手法はわかった。それを自分の現場にどう当てはめるかは、自分の腕の見せ所」とばかり、活用に積極的に取り組む。上の 2 つの成功例がそれにあたる。一方、「標準手法はそうかもしれないが、自分たちの環境ではここが違うから、適用できない」と決め込んでしまう、残念なケースも、数は多くはないが、ないわけではない。

「テイラリング」で「取捨選択と肉づけ」をするには、当事者が自分の頭で考え、最適解を出すという姿勢と作業が必要であるようだ。