タレント・トライアングル

2018/01/15 中嶋 秀隆

 PMI発刊の『PMBOKガイド』第6版に「タレント・トライアングル」(能力の三角形) が記載されている。第5版にまでにはなかった指摘だ。それによると、プロジェクト・マネジャーに3つの能力が求められる。

 すなわち、
 1) プロジェクトマネジメント技術
 2) 戦略的およびビジネスのマネジメント
 3) リーダーシップ

それを三角形の3つの辺で表したのが「タレント・トライアングル」である。
 プロジェクトマネジメントのノウハウは、PERTに基づくクリティカル・パス法を先駆けとして、その後、WBSやリスク・マネジメントなど、どちらかというとメカニカルな知識を中心に発展してきた。そうしたノウハウは各産業にそれなりにいきわたったといってよい。しかしながら、プロジェクトを行うのが人間である以上、人間的な要素が欠かせない。そこに焦点を当てるべきである。それこそが、プロジェクトマネジメントのさらなる進展に不可欠ではないか、という観点から「タレント・トライアングル」が生まれた。
 過去の一時期、私はインテルで半導体製造装置の調達をやっていた。日本には優秀なメーカーがあり、そういう取引先とガチンコでビジネスをしていた。そのときインテルの調達部門のメンバーで議論し、取引先の窓口担当者に求めたい資質を絞り込んだことがある。それは次のようなものである。

 1) 技術がわかる
 2) ビジネス判断ができる
 3) 社内をまとめられる

 日本を含む非英語圏の取引先には、もうひとつ、英語を使えることを加えた。
 この期待を公式の会議で日本メーカー各社に伝えた。すると、某メーカーの経営陣が異を唱えた。「そんなスーパーマンは当社にはいません」と。
 それを受けた、インテル側では、しからばと、丁重にお願いした。「スーパーマンがいないのでしたら、スーパーウーマンをお願いします」
 ビジネスに求められる能力の中核は、変わらないものであるようだ。