人間はどうやら、「どうやってやるの?」と言う手法(How To)が気になるものらしい。特に改革やマネジメントの領域に関してその傾向が強い。斯く言う自分も正にその傾向が強い。しかしそのままの状態での思考プロセスを踏んでしまうと、いつの間にか目的と手段が混乱してしまうのである。
『TOCの思考プロセス』では、3つのプロセスの順番が厳然としている。
即ち、①何を変えるのか?(What to Change) ⇒ ②何に変えるのか?(To What to Change) ⇒ ③どうやって変えるか?(How to Change)のプロセスである。そのプロセスを、順を追って踏む。ボトルネックが解消したら、再度次のボトルネック(①What to Change)から繰り返す事を基本としている。
この思考プロセス、調べてみるとTOCの専売特許ではなく古今東西を問わず普遍なものであるらしい。三国志での諸葛亮孔明の天下三分の計がそれであり、有名な赤壁の戦いもこの原則に沿っている。 即ち、①彼我の特徴を分析した上で、②どうあるべきか、どうなりたいかのVision(戦略)を示し、その後に初めて③どういう戦術でそれを実現するか と言うプロセスを経ている。他にも歴史の大きな事柄を分析してみると全く同一である事に気づく。最近では日産改革でゴーン氏が行なったプロセスもまさにこのプロセスである。
しかし一般的には、課題の分析やVision構築の段階でさえ、すぐに「どうやってやるの? ツールやソフトウエアーはあるのか?」と言った各論が気になる傾向が強い。プロジェクト・マネジメント用のソフトを導入すれば上手くゆくはず、とHow toをのみ気にする。あまたの戦術の単なる1つなのであるが、それがわからない。
製造業に特にこの傾向が強いのは、技術先行型での、成功体験による思い込みの弊害なのかも知れない。一方で、上位のマネジメント層に明確なVisionの創出を考える腰の強さがなくなったせいなのかもしれない。 そこを見抜けるシニアーマネジャーの出てきた企業が、一歩頭を抜きん出るのではないだろうか?
エッセイ
製造業の思い込み その-3:How toを先に気にする
2004/03/11 酒井 昌昭