ドバイの戦略

2014/05/13 中嶋 秀隆

2014 年 5 月 5 日から 3 日間 PMI の EMEA(欧州・中東・アジア)の大会に参加した。この地はここ 20 年ほどの間に大変貌を遂げ、 世界一のノッッポビル“バージ・カリファ”(828m)をはじめ、近代的な摩天楼が集中して林立している。
大会のプレゼンテーションで、2020 年に開催予定の国際 EXPO への期待が繰り返し語られた。その熱気を ”Expophoria” と表現している。
この地域は現在、産油国として豊かであるが、そもそも石油の輸出は“国土に切り売り” にすぎず、石油資源か枯渇すれば、豊かさも終わるのではないかと懸念されていた。 しかし、ドバイでは石油から得られる資本を発展のビジョンに結びつけ、その政策がみごとに奏功し、 その成功はさらに大きな反映をもたらしそうだ。政策の骨子は次の 3 つの柱である。

1)交通
ドバイは「世界の中心」(Center of the world)というキャッチフレーズが繰り返されるように、ここからは、 8 時間の空の旅で西はロンドン、東は香港に行ける(ちなみに、東京は 11 時間)。この好立地を生かし、空路のハブの地位を確立している。
2)観光
砂漠の暑さは厳しいが、空調完備の買い物スポットも多く(例えば、世界最大のショッピングセンター「ドバイモール」)、 マリーンスポーツ施設やゴルフ場もふんだんにある。「エジプトのピラミッドを訪れるのは、一生に 1-2 回だが、ドバイになら何度でも訪れるの」というのが、差別化のキーワードである。
3)金融
石油以外にはこれといって第1次産業・第2次産業が見当たらないようだが、それだけ金融センターとしての発展も目覚ましい。 通常の勤務時間で西は米国東海岸から東は東京までをほぼカバーできる。 こうした政策の結果、現在、石油ビジネスが GDP に締める割合は 5%ほどとのこと。さらに、2020 年の国際EXPO とそれに合わせた 新国際空港の建設も予定されており、しばらくの間、ここの経済成長は約束されているように見える。住民の 95%が外国人であり、イスラム教の戒律もかなり緩和されているなど、この地はユニークな発展をさらに遂げていくものと思われる。

以上