3通の手紙(萬話)

2004/05/10 中嶋 秀隆

現代のビジネス・シーンで第一のハード・ワーカーの仲間に入るのが、プロジェクト・マネジャーでしょう。プレッシャーに耐えて、プロジェクトを成功に導くのはたいへんなことです。
そんなプロジェクト・マネジャーにご紹介したい話しがあります。米国のPM解説書に出ている話で、その本は、香月秀文氏と中嶋の共訳で近日出版の予定です。
新任のプロジェクト・マネジャーが着任すると、前任者が部屋を出ていくところだった。その人が言うには、3通の手紙を机の引き出しに入れてあるという。どうしようもない問題が起きたら、その1通を開いてアドバイスに従え、とのことだ。
数週間後、プロジェクトの問題が悪化して手に負えそうにない。作業は遅れ遅れとなり、新任のプロジェクト・マネジャーはそのことを経営会議で説明しなくてはならない。困ったプロジェクト・マネジャーは会議の前に1通目の手紙を開けてみた。すると、そこには、「すべて前任者のせいにしろ」と書いてある。そこで、プロジェクト・マネジャーは、前任者をやり玉に挙げ、そのやり方がまずかったから・・・と説明した。経営会議ではその説明受け入れ、期限の延長と予算の増額を承認してくれた。
時間が経って、プロジェクトはまた泥沼にはまってしまった。プロジェクト・マネジャーは、再度、経営会議で説明し、もっとカネを出してくれるよう頼まなくてはならない。プロジェクト・マネジャーは2通目の手紙を開けた。すると「プロジェクト・チームのせいにしろ」と書いてある。この説明もうまくいって、プロジェクト・マネジャーはまた期限の延長と予算の増額を経営会議に承認してもらった。しかし、もうこんなことは繰り返さないよ
うに・・・と釘をさされた。
6ヶ月経って、プロジェクトは問題をかかえどうしようもない状態に陥っていた。納期はいよいよ遅れ、予算も大幅にオーバーしている。このままでは、プロジェクトの失敗は目に見えている。プロジェクト・マネジャーはため息をつくと3通目の手紙を開けた。そこに書いてあった指示とは、「3通の手紙を用意しろ。」