9 月 9 日栃木県、茨城県に降り続いた豪雨により、鬼怒川堤防が決壊し、 茨城県常総市一帯が浸水する水害に見舞われた。常総市は、我が家のある守谷市の北西に位置し、 西に鬼怒川、東に小貝川と2つの一級河川に挟まれた南北に細長い地形をしている。 鬼怒川の堤防決壊は、関東地方では 1986 年の小貝川の決壊以来のことであるが、我が家が守谷市に引っ越してきたのは 1990 年であり、 幸いにもこの災害は経験していない。しかし、近隣の取手市、竜ケ崎市などの友人からも小貝川の決壊はよく話題として聞いた話であり 、当時の決壊場所も何度も訪れたことがある。同様に、鬼怒川もかつては幾度も決壊したことがある河川であるとのことが今回の水害を契機に報道されている。
さて、今回の鬼怒川決壊であるが、実は予測されていた。国土交通省は、日本の主要河川の氾濫シミュレーションを行い HPで公開している。また、このシミュレーションに従い、各地方自治体は浸水被害マップを作りHPに公開している。 今回の鬼怒川の氾濫による水害は、このシミュレーション通りであり、浸水被害マップどおりの浸水が発生している。 余談だが小貝川の氾濫シミュレーションと浸水被害マップもあり、HPで幾度か確認している。これらのシミュレーションに加えて、 国土交通省は、主要河川の堤防には、光ケーブルを引き、監視ポイントにはテレビカメラを設置し、 河川の水位情報や河川の状況の映像をインターネット上にリアルタイムで公開している。今回の豪雨に関しても 、私は小貝川や鬼怒川そして利根川について、何度もこの映像や水位情報を何度もチェックした。その理由は、 我が家の南側 5kmに利根川、西側 10kmに鬼怒川、北側 2kmに小貝川が流れている。 3つの一級河川に挟まれそのどれかが氾濫しても浸水被害が想定されるからである。 幸いにも今回の鬼怒川の決壊場所は我が家から 20km離れており影響はなかったものの、小貝川、利根川の水位状況は予断を許さぬレベルだった。
今回の水害は我が国の自然災害に関する行政などの幾つもの問題を露呈させた。
その一つは、国土交通省の河川管理の在り方、二つ目は地方行政組織の災害危険情報の扱い方、 三つ目は我々住民の危機への対処のありかた、である。
国土交通省の河川管理については、今回の鬼怒川流域の浸水被害は、大きく二つの原因で起こっている。一つは、若宮土地区の越水(水が堤防を越える事)二つ目は、上三坂地区の破堤(堤防の決壊)。 一つ目の越水については、その地点は自然堤防であったのだが、民有地であったために、 ソーラー発電業者が自然堤防を削ったために堤防そのものが低くなっており、そこから越水した。 この工事について国土交通省の下館地域管轄部署は「何ら問題ない」と回答しているとのこと。 その後、近隣住民の訴えにより、2mの土嚢を積み上げることは行ったが、結果的にこの場所から越水を生じている。 この対応に?がつく。二つ目の上三坂地区の破堤の原因は、未だ解明されていないが、破堤に至る現象が鬼怒川の各所に生じており、 2011 年の大地震の影響も想定される。
問題点二つ目の地方行政組織の問題であるが、この問題は深刻である。前に述べたように、国土交通省は 、氾濫シミュレーションを行い、これを公開。河川の状況についてもリアルタイムに映像や水位情報を公開している。 しかし、地方行政は結果としてこれを生かすことは出来なかった。決壊場所の近隣の地域に対して避難指示情報が出されたのは 、決壊後であることは常総市も認めている。なぜ遅れたのかについては、理解できる回答はない。 多額の費用を費やし国土交通省が発生時対策用に情報提供を行っていても、それを活用できる 能力がない地方自治体は常総市だけではないと想定される(因みに、常総市は住民の情報を頼りに避難指示情報を出していたと報道されている)。
行政機関の情報が頼りにならないとすれば、問題点三つ目の住民の危機への対処の在り方に頼らざるを得ないが、 わが町が、我が家が各地方自治体の発信している災害マップでどのような状況にあるのかをどれだけ認識しているかが問題視される。 加えて、各地方自治体はそれをどれだけわかりやすく、どれだけアクセスしやすいように提供しているのかも大きな問題である。
リスクは、わが身の傍にある。それはいつ遭遇してもおかしくない。もって、瞑すること。
エッセイ
鬼怒川堤防決壊
2015/09/15 中 憲治