進捗会議で注意したいこと

2013/03/15 中嶋 秀隆

プロジェクト進捗会議で、注意したいことを3つ指摘しよう。

まず、会議での発表は具体的な内容にすること。スケジュールであれば、「予定通り」とか、「〇〇日遅れで、対策はこう」、「〇〇日先に進んでおり、今後の見通しはこう」という具合に。この場合、数値化できるものはデータに語らせる (Let the data speak.)。とかく、「日夜を分たず、全員がんばっている」といった、意味不明の発表がありがちだが、慎まなければならない。次に、「すべて順調」という発表は要注意だ。プロジェクト計画は多くの予測と見積りから成り立っている。「予測は難しい。特に、将来については」というジョークがあるが、見積りは必ず外れる。だから、「すべて順調」などという説明には、目を光らせる必要がある。問題なのは、計画と実績に乖離があることではない。実行面での乖離はつきものであり、それをどう認識し、どう対処するかが大切である。

そして、「すべて順調」という発表は、別の点でも要注意だ。「不測の事態」や「リスク」が必ず起こるからである。この点、作家。曾野綾子が聞くべき指摘をしている。日本財団会長として着任後、発展途上国の業務の説明を受けたときのエピソードだ。

私は着任後あらゆる業務の説明を受けたのですが、そのうちの一人で、外部監査をしに現地に行った人が、「この薬のリボルビング・システムは、非常にうまく行っております」という報告をしたので、その瞬間、私はこれはうまくいっていないに違いないと思ったのです。人間の仕事には必ず想定外のことがあって、百点満点もなければ零点もないのです。もしその監査人が「これこれのところに苦労しておりますので、改変の必要があると思います」と言ったなら、私はその言葉のほとんどを信じただろうと思います。」
出典:曾野綾子『この世に恋して』WAC、2012 年

弊社のセミナーでもリスク・マネジメントの要諦として「すべてを想定し、対策は重点的に打つ」ということを紹介している。とはいえ、すべてを想定することは現実にはできない。計画策定に、無限の時間があるわけではないからだ。こうした不確定性があるなかで、チャレンジングな目標を追いかけるところに、プロジェクトマネジメントの醍醐味があるといってもよい。

以上