知識体系と「守破離」

2016/08/30 中嶋 秀隆

わが国の武道や芸術の世界に「守破離」(しゅはり)という語がある。師弟関係のあり方を示すもので、スキル習得を 3 つのステップでとらえている。

 最初は、初学者が師の指導を忠実に学ぶ「守」のステップだ。第 2 のステップが、その型を乗り越え、自分に合った型を模索するために、既存の型を打ち壊す「破」。そして最終ステップの「離」では、師の指導と、自分の型に依拠しつつ、自由に型を離れて自分なりのやり方に行き着くとされる。
 これをプロジェクトマネジメントのスキルの体得に当てはめると、次のように整理できる。
「守」では、PMBOK や P2M、ICB などの知識体系をそのまま理解することに努める。ここでは、関連書を読んだり、研修に参加したりするのが有効だ。
「破」では当人の創造力の出番である。すでに学習した知識体系を、自分のプロジェクトや業界に当てはめてみる。そして、知識体系を乗り越え、そこに合うやり方を見つけるために、いろいろな工夫をする。プロジェクトマネジメントが行われる状況は千差万別であり、ここでの工夫が、やがて大きな違いとなって現れる。筆者の経験でも、これができる人と組織は大きく成長する。
「離」まで進むと、知識体系と自分のプロジェクトや業界の状況を踏まえた最適解に至る。ここまでくれば、自分なりのやり方が明らかになる。そして、自分なりの肉付けや脚色と楽しむことができる。そして、この最適解は変わり続けるということに注意したい。プロジェクトは生き物にほかならないからだ。
 武道や芸術の「守破離」は、プロジェクトマネジメントでも力を発揮するに違いない。