大学院でリーダーシップ論の講義を担当していて 範囲が非常に広いので 試行錯誤を繰り返しながら 講義の準備をしています。その中でEQとリーダーシップの関係において 従来のリーダーシップ論とは異なる知見をみつけ なかなか面白いと思いますので紹介します。リーダーシップ論というと偉大なリーダーがどのような行動を取ったかを分析してその方法を踏襲してリーダーシップを身につけることを推奨しますが 実際にはどうもしっくりいかないことが多いようです。そのひとつのヒントとして 脳の働きが関係しているようです。
自己認識に優れたリーダーの場合、ビジネスの決断において自然に直観が働く。あふれるほどのデータがあるのになぜビジネスに直観が必要なのだろうか?神経学的研究によれば、自分の気持ちに耳を傾けることはデータの意味づけに役立つので、より良い結論に到達できる。脳の中にある情動記憶の蓄積が判断の助けになる。科学の発達によって情動は理性と対立するものではなく、理性の一部であることがわかってきた。
データが膨大になりすぎ将来を読み取りにくくなってきたからこそ、リーダーにとって直観の冴えが一層大切になっている。
脳の深いところ、言語の届かない部分(大脳基底核)で行われるため、経験に培われた知恵にアクセスするには自分の直観を信じる以外にはない。すぱっと割り切れない決断を下す際に使われる神経回路には大脳基底核だけではなく、記憶に付帯する情動を記憶する扁桃体も関わっている。意思決定に必要な情動を引き出してくれるのは、「言語をつかさどる脳」ではなく「情動をつかさどる脳」である。
共感はリーダーが共鳴を喚起するという基本的役割を果たすために不可欠な能力。人々の気持ちに自分の感覚を同調させることによって、リーダーは集団に安心感を与えたり、怒りを鎮めたり、高揚した気分に参加したり、場面にふさわしい対応ができる。また集団を導く上で、大切な価値観や優先順位を感じ取ることができる。
共感能力を欠くリーダーは、知らず知らずのうちに集団と調子がずれ、負の反応を引き出すような言動をしてしまう。
他者の話に耳を傾け他者の視点でものを見る共感能力のあるリーダーは、集団の感情に同調し人々の心に響くメッセージを送ることができる。
共感は「I am OK,You are OK.」というような甘ったるい関係を意味しない。集団の感情に追従したり、全員の気に入られようとしたりするのがリーダーの役割ではない。共感とは従業員の気持ちをよく考慮したうえで、聡明な決断を下すこと。
ビジョン型リーダーシップ