恵まれたひと時

2010/10/15 中嶋 秀隆

先日、村松かすみさん(弊社インストラクター)と一緒に、夏休み明けの大学キャンパスに行った。理工学部4年生の「卒論中間報告」を聴くためである。

ここでは10年来、毎年4月に「プレゼン技法」の講義をしており、それを受けて、学生全員が夏休み明けにプレゼンする。担当の先生方のご尽力のおかげで、すでにひとつのカルチャーとして確立している。

学生諸君のプレゼンの中身は専門的で、畑違いの私にはよくわからないものが少なくない。そこで、プレゼンの構成や発表の方法に注意しながら、聴いた。そして、その場を、2つの視点から「恵まれたひと時」と感じた。

まず、学生諸君についてだ。世のビジネスパーソンの中には、プレゼンの訓練・体験がまったくないまま、いきなりプレゼンすることになって、苦労をしている人が少なくない。しかも英語でやらなければならず、直前まで会社のトイレの個室に閉じこもって、ブツブツ練習している例もある。その点、こちらの学生諸君は、プレゼンの基本技法を習得するチャンスを事前に与えられ、数ヶ月かけて資料を準備し、先輩方を相手にリハーサルをたうえで、当日を迎える。しかも当日は、それぞれの分野を極めた先生方にプレゼンを聴いたもらい、質疑応答の時間まである。かれらが将来どんな分野に進むとしても、その大半は、この日を皮切りに何べんもプレゼンをするに違いない。ラッキーなスタートである。

もう1つは、先生方についてである。先生方はご自分の専門分野を中心に指導され、そのプロセスをつうじて、前途ある有為な若者にポジティブな影響を与えられる立場にある。「卒論中間報告」もその機会である。普段、ビジネスの観点で仕事をしている私には、実に恵まれたお仕事であると感じた。
学生諸君と先生方の、ますますの発展を期待したい。