困りながらも

2014/04/14 中嶋 秀隆

プロジェクトは一般に、1)立上げ、2)計画、3)実行、4)監視・コントロール、5)終結という流れで進むのが望ましいとされる(例えば、PMBOK®第5版)。 たしかに、開始と終了という2点を最短で結ぶとしたら、直線を引くことが、無駄がなく最も効率的だ。

とはいえ、もろもろの事情が絡んでくると、物事は単純ではなくなるし、それが現実のプロジェクトだ。制約条件がのしかかることもあれば、 前提条件が当てはまらないとあとになって判明することもある。そして、見積りは必ず外れる。「見積りは難しい。とくに将来のことについては」との警句の通りだ。

だからといって、難局にぶつかったとき、闘いを放棄したのでは、プロジェクトの成功は望むべくもないし 、プロジェクト・メンバーの成長のチャンスをみすみすやり過ごすことになる。

だいぶ前のことだが、数学者・森毅氏がどこかで「困りながらも、やりとげることが大切」とおっしゃっていた。畏友・秋山進氏もごく最近の紙面の中で、「あたふたと仕事しよう」「生きているって、予期せぬ状況の中で慌てふためいて、 自分が予想しないものに変っていくことではないか」と言っておられる。(朝日新聞、2014 年3 月 30 日)。

プロジェクトの改革策定では、2点を最短で直線を引く(いわゆる、「ベースライン」)。しかし、実行現場では、その直線からしなやかに外れることを躊躇しない。それが、フレキシブルということだ。そしてひと山越えたら、当初に引いた直線に必要な修正を加えて、再び終了をめざす。大切なのは、状況がもたらすさまざまなリスクをたのしむことであろう。

以上