新刊書を出していただいた。『7つのユーモア習慣』(トウーヴァージンズ)である。英書を日本語で紹介したいと考え、原著者を相談の上、思いっきり日本語化した。いわば、超訳である。
昨年、エストニアで開かれた国際ユーモア学会で、原書の存在を知り、読んでみるととてもよい内容だ。そこで、米国人の原著者に訳出の意思を伝え、カナダで面談して、ここにきて出版に漕ぎつけた。
その本の一節をご紹介しよう。原書者が心理学に進んだ経緯を要約している。「厄介ごとに幸あり」といってよいエピソードであり、「私」とは原著者、ポール・マギー氏のことだ。
“私の体験でも、大きな不幸が実は「偽装した祝福」であった、ということがあります。私が心理学の道に進んだのは、大学1年次の数学と化学の成績不振がきっかけです。指導教官は数学者でしたが、2年次の学期初めに、私の成績を見て、「専攻を変えないか」といったのです。私はショックで頭が真っ白になり、思わず、「心理学」と答えました。その前の夏に兄が心理学の本を読んでいるのを見て――私は読んではいませんでしたが――面白そうという印象を持っていたのです。だから、とっさに「心理学」といったのです。心理学を学びたかったわけではありません。その場を何とかやり過ごしたい一心からでした。もし、兄の本が天文学のものであっとしたら、私は「天文学」と答えていたかもしれません。
仮に大学1年次の成績がそんなお粗末なものでなかったとしたら、私は理系の道に進み、やがて後悔することになったかもしれません。もし、数学でよい成績を取っていたとしたら、心理学に興味を持つことはなかったでしょう。そして、笑いとユーモア、ストレスや健康についての専門家の道を歩むことはなかったでしょうし、この本を書くこともなかったでしょう。当時は大きな不幸だと思ったことが、実は最高の幸運だったのです。
これが、マギー氏が心理学に進んだ経緯です。
「偽装した祝福」について、補足します。あなたをこの世に遣わせた存在がいるとしましょう。この素晴らしい世界にあなたを送り出した、慈悲深い幸運の女神です。女神はいつもあなたの味方であり、あなたの成長と成功、幸福を強く願い、ずっと応援しています。でも女神は知っています。よく整備された、ごく平坦な道を進むだけでは、あなたが感じる「生きる喜び」は限られたものとなり、あまり深まらないということを。そこで女神は、あえて不幸という仮面を被ってあなたの前に現れます。それが逆境という形をとるのです。逆境とは、あなたが「生きる喜び」を深く味わうことができるように、女神が用意した「粋な計らい」であり、「天の配剤」なのです。“