人芯経営論 ・・・願望の力

2010/06/17 浅見 淳一

自己啓発本の代表といえばナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」が有名です。最近では「引き寄せの法則」が売れていました。「思うことからすべてが始まる」は論理的に納得できます。目標があってはじめて方向が決まります。

◎ 潜在意識の働き
「思考は現実化する」の本は、ただ願うことだけを薦めているわけではありません。願望を持つ→目標を設定する→計画を立てる→実行する→諦めない。大雑把にはそんなプロセスです。1人で部屋に閉じこもって、誰とも接触しないで、何かを願い続けていても、実現する可能性はかなり少ないはずです。強い願望を持つことで、潜在意識にその思いが刷り込まれます。その結果、大きく変化するものが2つあります。
・ 潜在意識は、行動を変化させる
強い願望は、意識をしなくても、行動する選択肢を変化させます。
「心が変われば、態度が変わる。
態度が変われば、行動が変わる。
行動が変われば、習慣が変わる。
習慣が変われば、人格が変わる。
人格が変われば、運命が変わる。
運命が変われば、人生が変わる。」
上記は、ヒンズー教の教えです。プロセスに合理性があります。
メジャーリーグ・エンゼルスの松井秀喜選手は、これを座右の銘としているそうです。
亡くなられた元巨人軍の木村拓コーチのNPB新人研修の時の講義内容が、ネット上で若者に勇気を与えていると聞きました。好きな野球を続けるために諦めない姿勢が共感と感動をよんでいます。
http://www.giants.jp/G/museum/2009/information/info_40309.html
・ 潜在意識は、情報を選択する
探していた本が偶然見つかる。会いたかった人に偶然会える。知りたかったことを偶然知ることができた。などの経験は誰でもあります。人の情報の入力器官の目や耳や鼻や皮膚などからは、常に膨大な情報が脳にインプットされています。しかしそれらのすべてが人の生存の為に必要な情報ではありませんから、すべてを脳が処理することは無駄ですし効率が悪いです。そのため潜在意識でフィルターをかけて必要な情報を選択します。願望を刷り込まれた潜在意識は、願望をかなえようと情報を選択します。偶然だと感じていることの多くのことは潜在意識の働きによるものです。
逆にマイナスのイメージを潜在意識に焼き付けると、それに関する情報を収集してしまいます。潜在意識は、良い悪いなどの判断はしません。早く寝なければならない時に限って、いつも気にならない時計の音が急に大きく聞こえてしまい寝むれなくなった経験は誰でもあるはずです。寝らなければならない→寝られなかったらどうしよう。という恐れが寝むれないイメージを潜在意識に刷り込みます。そして睡眠の邪魔となる音を脳が選択してしまいます。逆に気持ちの余裕のある日には、いつもの道なのに、花の良い香りや鮮やかな緑に気づいたりします。人は良いイメージを意識して潜在意識に焼き付けることが可能です。そのためにも人間性を磨く必要があります。

<余談1>
江戸博物館の「竜馬伝展」を見に行きました。NHKで放送中でもあり多くの人が訪れていました。考えてみれば、当時は新幹線も飛行機も携帯電話もパソコンも何もない時代でした。それでも志や使命感や情熱で、大きく時代を動かした人達がいました。
人は一人ひとり違う多様性を持っています。とはいえ私はいたって平凡なタイプですから人並みに悩みもすれば迷いもします。でも龍馬を見ていると「なにを、ちんまいことでくよくよしとるのかのぉ。世界は広いぜょ(土佐弁のつもり)」と励まされている気がします。
他にも維新の志士の品々もたくさん出展されていました。平井修二郎が獄中、爪で書いた爪書は気持ちを想像すると胸が詰まります。中岡新太郎の書の「人の評価は生まれや家柄などでされるものでなく、その人が何をなしたかで評価される」は封建社会の中では圧倒的に革新的な考え方であったはずです。アメリカのキング牧師の演説を思い出しました。153センチぐらいの身長だったらしいです。笑顔の写真がたくさん残されています。

<余談2>
友人がベンチャー経営者の懇親会に招待してくれました。そこで出たばかりのiPadのデモンストレーションを見ました。実物を見るまでは、「キーボードの無いパソコン」だろう程度の認識でしたが、実物を見るとかなりインパクトがありました。学校の教科書は、iPadが一台あれば済みます。もう重いランドセルは不要です。教科書が変われば、それに合わせて授業風景も変わります。明治時代は黒板と白墨が最新のテクノロジーだったのでしょうが、いまだにそれを主に使っています。
私は複写機メーカーに勤務していました。複写機はネットワーク社会になりプリンターに進化していきました。結果全体の印刷枚数は増えました。しかし紙の利便性はiPadでかなりカバーできます。出版社や書店だけでなく複写機メーカーにも大きな影響がでそうです。他に任天堂やソニーのゲーム機にも脅威だと感じました。
私がいた会社の親会社のフィルム・メーカーはデジタルカメラの出現で収益構造が一瞬にして変わりました。携帯プレイヤーの出現で、街のレコード屋さんがなくなりました。なんと渋谷のHMVもなくなります。ダーウィンの言葉だといわれている「強いものが生き残るのではない、変化に対応できたものが生き残るのだ」がまさに現実化しています。恐竜のように大きいことが必ずしも強みにならない時代になりました。
インターネットの第一世代は、インフラを作りました。第二世代は、ネットと物販を融合させました。第三世代は、ゲームやコミュニティなど形のないものに価値を与えました。衰退する産業もあれば、新しい産業も出てきます。文字、映像、手続きなどデータでネット処理可能なものは全て置き換わります。これからも次々と新しいサービスが出てきます。若者たちが新たな時代を作る準備ができています。