人芯経営論 ・・・習慣の作り方①

2011/06/15 浅見 淳一

5月のエッセイで、人は習慣に依存して生活していると書きました。ですから、良い習慣を作れば、良い方向に進みますし、悪い習慣に依存していれば、悪い方向に突き進みます。「早寝、早起きの不良に出会ったことがない」という人がいました。確かに早寝早起きの不良はイメージできません。
良い習慣を作る方法を、私の独善的な意見を3つ挙げます。

◆簡単にできることを続ける
スティーブン・R・コヴィー著の「7つの習慣」という素晴らしい本があります。途中でいったん休憩する根性のない私には、読み切ることが難しい本です。一度に7つもの習慣を意識しながら行動することはさらに困難を極めます。難しいことや複雑なことは、一時的に何かのきっかけで啓発されても、すぐにめげてしまいます。子供のころ誰でも夏休みの宿題がきっかけで日記を毎日つけようなどと大胆なことを一度は実行したことがあるのではないでしょうか。私ですら思ったことがあるような気がします。でも多くの人はたぶん私と同じように最初の数ページで終わっているのではないでしょうか。
習慣を作るコツの一つは、最初は、簡単にできることを継続することです。毎日、日記は書けなくても、スケジュール帳にその日に会ったことを1行書こうと決心すれば出来そうです。毎日ジョギングはできなくても、駅や会社の階段を出来るだけ使用することはできます。(最近は節電のため否が応でもそうしていますい。習慣を作るチャンスです)。
大リーグのイチロー選手は、「今までで他の選手と比べて一番練習してきたと思うことは何ですか」との質問に、「子供のころから毎日寝る前に10分間365日一日も欠かさずに素振りをしてきました。それが一番練習してきたことです。それが自信につながっています」と答えています。少し前にはやった「トイレの神様」の歌のトイレ掃除も同じことがいえます。毎日家中をきれいに掃除しようとすることはかなり大変です。トイレは普通の家では一番小さい居住スペースです。ほぼ密閉されているからそれほど汚れません。ですからトイレを毎日掃除することはしようと思えば、3分もかかりません。

簡単なことを続けるということが習慣化するための一番の方法です。心理学では、21日(21回)継続すると習慣化される可能が高くなるとのデータがあります。週に一度なら約半年続けば習慣化します。習い事などの分岐点ではないでしょうか。簡単なことを続けた結果、習慣化されたら、今度はやらないと落ち着かない精神状態になります。そうしたらまた簡単でやりたいことをそこに追加していきます。そうして少しずつアドオンして習慣化する内容を増やしていきます。掃除ならトイレから少しずつ家の他の部屋に広げていきます。一か所トイレをきれいにすれば、今度は他の部屋の汚れが気になり気持ち悪くなるものです。

マルコム・グラッドウェル著の『天才!』で説明されている「1万時間の法則」があります。人は同じことを1万時間続けると一流になれるという法則です。バイオリニストを調べたところ練習時間の差によって能力の差がでており「練習をせずに天才的才能を発揮する人」も「いくら練習しても上達しない人」もいないという結果でした。イチロー選手も毎日10分の練習以外に小中学校の間、毎日バッティングセンターに行って父親と練習していました。しかしイチロー選手にしても少しずつ習慣化して練習量を増やしたはずです。トップになるためには才能や素質が必要です。しかし才能ないことを1万時間続けることはかなり難しいですよね。よほどの決意とかモチベーションが高くなければ、一つの目標に向かって長期に行動を継続することは不可能です。

一万時間は、一日10時間毎日何かに打ち込むと約3年になります。諺に「石の上にも3年」は、集中して習得しようとするときの正しい言い伝えです。スポーツなどを毎日10時間続けることは無理です。仮に一日3時間であれば10年かかります。多くの結果を出している有名選手は、小学校の作文で、将来の夢をプロ選手と書いています。イチロー選手はプロ野球選手に、ゴルフの石川遼選手はマスターズに、サッカーの中田選手はワールドカップに出たいと書いています。一流選手になるためには、それなりの練習量と時間が必要ですから、早くから目標を持った方が有利なことは間違いありません。多くの有名選手は、10年以上の習慣化された練習を続けています。

私などは、自分の努力不足や継続していないことを棚にあげて、才能がないとか、向いていないとか言訳ばかりを言って自分を慰めています。考えてみれば情けない奴です。
簡単なことを続けるメリットは、習慣化することのほかに、続けることにより自分に自信が付きます。やろうと決心したことは、ある意味自分自身にコミットメント(やりますと宣言)していることです。続けることによって約束が守れていることで、最近の表現ではセルフイメージが高まります。逆に難しいことをやろうとして断念した場合は「俺って、なんてダメなやつ」などと考えてしまい、自信を無くしてしまいます。

仮に継続しようとしていることが、何らかの原因であるとき続けられなくなった時は、約束が守れなかった。と自分を責めて止めてしまうのではなく、ここまで続けられたのだから、「俺ってたいしたもの。よし明日からまた頑張ろう」と前向きに考えるようにします。禁煙やダイエットにも有効な考え方です。

家庭では親は子供にたいして、会社ではマネジャーは部下に対して、少し頑張れば出来る目標を課題として与え、できたらほめる、評価をする。などを繰り返していくことが有効な育成方法です。自分自身で小さな約束を守るのは、自分で自分自身を育成する考え方です。後2つ習慣化するための簡単なコツがあるのですが、今月も長くなってしまったため、来月に繰り越したいと思います。引っ張りすぎですかね。お許しください。

<余談1>
最近のマイブーム(もうこんな表現する人いませんね)は、落語です。毎月1日に映画を見ていましたが、ここ2カ月は、前売り1200円の両国寄席で落語を聞いています。プレゼンの勉強にもなりますが、何となく世情が暗いので心のリフレッシュも兼ねています。来月も行く予定です。 夏目漱石は、神経症になった時に、落語を聞きまくって直したらしいです。『坊ちゃん』や『吾輩は猫である』にはその影響が出ているそうです。そういえば写真を見る限りでは、夏目漱石は神経質そうに見えますよね。

笑うと白血球が30%増えるというデータがあります。癌にも有効だとも言われています。122歳で亡くなられた、鹿児島の泉重千代さんが、114歳で世界最長寿のインタビューを受けた時に
Q「長生きの秘訣は」
A「神様、仏様、お天道様のおかげじゃよ」
Q「好きな女性のタイプはどんな人ですか」
A「こう見えてもわしゃ、甘えたがりだから、年上の人じゃな」
と答えたらしいです。そりゃ長生きするわ。別の時には、長生きの秘訣に「お酒と女性」と答えています。重千代さん。あなたはすごい。尊敬してしまいます。
テレビの笑点は毎週視聴率のベスト3に入っています。ユーモアは、人生の潤滑油です。みんなで落語を聞いて重千代さんを目指しませんか。寄席には若い人も結構います。

<余談2>
1828年に越後の三条に大地震があった時に、良寛さんが知り合いに出した手紙があります。人によって感じ方は様々だと思いますので、コメントなしで一部をご紹介いたします。「災害に逢う節には、災害に逢うがよく侯。死ぬ時節には、死ぬがよく侯。是はこれ災難をのがるる妙法にて候。かしこ」