人芯経営論 ・・・マーケティングにおける「受け手の心理」

2009/09/17 浅見 淳一

前回も、マーケティングにおける心理的手法を幾つかご紹介いたしました。情報を発信する側の視点での、マーケティング手法ですが、今回は、受け取る側の心理です。必ずしもマーケティングに限定されませんが、関わっている部分もあります。
最近、脳関連の書籍で、脳科学者の茂木健一郎さん、心理科学者の苫米地英人さんや石井裕之さんの本が売れています。苫米地さんの本は、時間待ちの時によく立ち読みします。ボリュームも適当ですし、読みやすいので、お勧めです。(たまには、ちゃんと買います)

自己の正当化…どんな人でも、自分の行動を正当化しようとする心理になります。たとえ犯罪者でも、責任を他に転嫁して、自分の行動を正当しようします。言い訳、屁理屈レベルもこの心理現象です。例えば、自転車を盗んだ人が捕まった時に「自分の自転車も盗まれたから」などと言いますが、そんな理屈が正しい訳がありません。「泥棒されたから、自分も泥棒をした」と同じことです。自己の正当化の多くは、自分勝手なもので、他者から見ると勝手な言い分が大半です。人の意識は、自分を出来るだけ責めないような防衛的な方向に進みます。自分の過ちを素直に認めることが、難しい原因です。
創造的回避(クリエイティブ・アヴォイダンスというらしいです?)…

これは、最近立ち読みした苫米地さんの「残り97%の脳の使い方」に書いてあり、思わず苦笑いして納得しました。人は、基本的には、楽なこと、難しいことを避けようとする意識が働きます。ただサボるという逃避行動は、罪悪感が起きますので、それを避けるために、創造的な行為を行って、難易度が高い行為を回避しようとする行動です。例えば、仕事にかかる前に、机や部屋の整理を始めるとか、まずメールの処理から始めるとか、簡単なことからする行為が、それに当たります。確かに、私も、仕事を始める前は、特にきれい好きと言うわけではありませんが、掃除をしたくなります。個人的には、それを避けるために、何か習慣的な行為を決めて、脳にスタートのサインを与えることが有効だと思っています。「パブロフの犬」の理論です。私は、仕事を始める前にはホットコーヒーを飲んでから、とりかかります。野球選手がグランドに入る時は左足からなどのジンクスも、キーアクションとしての効果があるのかもしれません。

現状維持の心理…
これは、石井浩之さんの「人生を変える!心のブレーキの外し方」に書かれている内容です。人の潜在意識は、急激な環境の変化から自分を守るために、出来るだけ現状を維持しようとする心理が働きます。ダイエットがなかなか上手く行かないのも、貧乏のままなかなか変えられないのも、この潜在意識の現状維持メカニズムが影響しているからです。潜在意識では、やせていたら良くて、太っていたら悪いとか、お金持ちが良くて、貧乏が悪いなどとは判断しないようです。この潜在意識の矛盾を解決するシンプルな方法は、まず、わずかでもスタートを切ることです。最初の一歩こそ、一番大きなエネルギーが必要とされます。ですから、出来るだけ最初は丁重に、簡単な目標から始めることが薦められています。納得できる話です。確かに、0と1の差は、1と100の差より、はるかに大きいと思っています。少し頑張れば達成できる目標を設定して、達成する癖をつけるのは、ビジネスでもマネジメントでも大切なことだと思っています。自分や人の心理、意識の働きを意識して、良い方向に向かって行動を選択することは、ビジネスの成功にとっても有用だと思っています。良いセルフイメージを持つことも、成功する為の大きな鍵です。