目標を決めるのはいいが、目標設定のやりすぎも、こだわりすぎもいけない。こだわりすぎると他のことが目に入らなくなる。計画ずくめの生活をしていると心に余裕がなくなり、その結果、選択肢を狭め、せっかくのチャンスを逃すことになりかねない。ウエイン・w・ダイアーは「計画ずくめ」にならないようにと、次の指摘をしている。
「計画自体は必ずしも不健全とはいえないが、その計画にのめり込んでしまうのは本物の神経症である。25歳、30歳、40歳、50歳、70歳などの年齢でそれぞれ何をする、といった人生設計があるのはよいであろう。予定案を参考にして自分はどのあたりの位置にいるべきかを知るだけにとどめ、毎日新たな決心をしたりはせず、必要とあらば計画の変更を要するほどの強い信念を持つことはよい。けれどもその場合は、「計画の荷」が勝ちすぎないようにするべきである」
ダイアーの指摘と軌を一にする論点を、米国のキャリア・カウンセリングの先駆者、J・K・クランボルツは、さらに展開させる。
クランボルツの調査によると、ビジネスパーソンのうち、18歳の時に将来就きたいと考えていた職業に実際に就いている人は全体の2%ほどに過ぎず、大半の人はそれ以外の職業に就いているのが現実である。また、成功を収めているビジネスパーソンを調査すると、多くの人が自分のキャリアを振り返り、「人生の転機」の8割は思いもよらない偶然によりもたらされたと考えているという。これは、キャリアは意図して積み上げ、いわば線形に発展させるの
がよい、という通念に対置するものだ。
子どもが小さいころよくさらされる問いの1つが「大きくなったら何になりたい?」というものだ。当人は少し考えて、「プロサッカー選手」「プロ野球選手」「宇宙飛行士」「お医者さん」「学校の先生」「サラリーマン」「ケーキ屋さん」「お嫁さん」……などと答える。だが、そういうかたちで口にした夢や目標にこだわりすぎると、一時しのぎに口にした職業に縛られることになったり、自分に向いていないと気づいたとしても方向転換できないということになりかねない。そこには、方向転換はメンツに関わるとか、そこまでに費やした労力や時間、お金(埋没コスト)がもったいない、などのことが頭をよぎるかもしれない。
そこで、計画づくめにならず、偶然がもたらすチャンスを首尾よく活用する手法として、クランボルツは「計画的偶発性」(Planned happenstance)の理論を説く。そのポイントは次の5つである。
① 好奇心をもつ
② 粘り強く取り組む
③ 柔軟である
④ 楽観する
⑤ あえてリスクをとる
以 上