最近ファシリテーションと言う言葉を聞くようになり、ファシリテーション能力を高めたいという要望が増えています。People Skillsの中にファシリテーション・スキルがあります。外資系の会社では比較的以前から、マネジメントクラスの地位になるとPeople Skillsの強化のトレーニングを受けさせられることが多いようです。私もフランスの会社で働いているときに、HongKongでINSEADの教授によるトレーニング5日間受けさせられました。グローバル・カンパニーでは人種の違う人たちが働いているので、People Skillsはコミュニケーションを図りながら、チームをリードしていくのに必須のスキルとなります。もともと、文化、教育環境の異なる人たちが集まって仕事をしますので、人間の態度や行動に対する心理学的なアプローチが必要になってくるわけです。その中のひとつにファシリテーションがあります。プロジェクト・マネジャーは状況に応じて4つのハットをかぶります。
ファシリテーターの定義を調べますと「メンバーの参加を促しながら、グループを導きグループの作業を容易にする人のこと」とあります。そのベースとなるファシリテートは「容易にする。あるいは難しさを軽減する」となり、ファシリテーションは「グループメンバーを鼓舞し、参加を促して創造性や当事者意識、生産性を引き出すこと。リーダーシップの一形態」
(ファシリテーター型リーダーの時代/ フラン・リース著 プレジデント社)
プロジェクト・マネジャーがプロジェクトの成功を達成するために必要なスキルがファシリテーションということになります。一般論のファシリテーションではメンバーの主体性に任せて、個々の自主性を尊重し、中立の立場から会議などを誘導してゆくイメージがありますが、プロジェクト・マネジメントにおいてはファシリテーションは、決められた目標に向かってAssert(主張する)能力が必要とされています。一般論のファシリテーションより強力なイメージがあります。プロジェクト・マネジャーがそのファシリテーション能力を発揮する機会はプロジェクトの
キック・オフ会議のときに発生します。その中でのファシリテーションは
・会議を正しく導く
・効果的・効率的に遂行する
・個人やグループの作業を効果的にする
グループの意思決定を促す。意思決定はコンセンサスか多数決で行なう
コンセンサスは合意と訳されますが、これは単に妥協して意見を合わせることではなく、もともと個人は異なる発想をするという前提に立っていますので、お互いの主張をぶつけたディスカションを通してコンセンサスに至ると言うことです。それぞれの利益が相反する場合が多くありますので、ディスカションを通さなければコンセンサスを得ることはむずかしいわけです。そのときに、自分の主張はきちんと行い安易な妥協はしないということです。お互いに違いを認めた上で解決案を開発するということです。
グループの意思決定には次の利点があります。
・全員が参加できる
・相互理解が深まる
・責任および説明責任を共有できる
・ひとりで行う解決方法より、解決方法の改善ができる
ファシリテーターの役割は
・メンバーの参加および理解を促進する
・WIN=WINによる解決を促進する
・中立を維持する
・グループの活動に焦点を当て、時間通りに進める
・指導方法としては
・時間を管理する
・情熱やアイディアを集めて入力する
・意見やイシューを明らかにし、焦点を明確にする
・合意事項と合意していない事項を明らかにする
・利害対立に対処する
・理解度を確認する
・感謝をあらわす
指導技術としては
・パラフレージング(自分の言葉で言い換える)
・ミラーリング(相手の言葉を繰り返す)
・相手にしゃべらせる
・スタッキング(話が本題よりそれるのを防ぐ)
・トラッキング(次の発言者の発言をすすめる)
・それぞれの意見の重さのバランスをとる
・メンバーの参加を促す
・沈黙する