いざという時の振る舞い

2010/07/15 中嶋 秀隆

出張の途中、道すがらの書店で、池波正太郎の関連の文庫本を買った。帯に「いざというとき、いかにふるまうべきか」とある。

ひとりの個人の一生に「いざという時」は幾度もある。めぼしいものだけを数えても、十指に余るだろう。例えば、進学や就職、結婚、第1子・第2子の誕生といった喜ばしいマイルストーンへの到達がある。一方、年老いた祖父母(4人)との死別も避けられない。
仕事について考えても、変化の激しいビジネス界では、「会社の寿命は20年」といわれている。そこでは、就職した会社の本業が変わったり、予想もしなかった異動を命じられたり、自分の責任でもないのに、部門ごと売りに出されたり、リストラに遭ったりすることも珍しくはない。一個人の就業期間を40年とすると、平均値の法則からいって、少なくとも2-3回はこういう大きな変化に遭遇する。

その間に、育ちつつある子どもは、学校でトラブルに巻き込まれる、体育の授業でケガをするなどのほかに、進学や就職の相談で岐路に立つなど、一筋縄ではいかないこともある。いずれも、親の頑張り所だ。
さらに、実の父母と義理の父母を見送ることも避けられない。物事には順番がある。自身がケガをしたり、病気にかかったり、住環境が変わったり、技術の進歩が暮らし方や働き方を大きく変えることもある。交通事故や天変地異、はたまた戦争なども起こりうる。こういうイベントのたびに「何で俺(わたし)が?」とか、「世の中は理不尽だ(Life is not fair.)」と感じることもある。そこが「いざという時」である。その時に「いかに振舞うか」がその人の真価を決める。

プロジェクトではQDC(品質・コスト・納期)の3つの指標で目標達成を求められる。さらに、3つの指標は、毎回厳しさを増す。プロジェクト・マネジャーとしては、針のムシロに座らされていると実感することも少なくない。だが、プロジェクト・マネジャーとして成功する人は、辛酸をなめながら (in a hard way) も、難局を切り抜け、大きく成長している。

心理学者アル・シーバートによると、マイナスの大きな変化への対応のパターンは、1)攻撃する、2)引き籠る、3)ショックを受ける、の3つに大別されるという。そして、ショックを受けたあとに、A)そこで犠牲者となるか、B) それを受け止めて、立ち直り、さらに成長するかが分岐点だとのことだ。

マイナスの大きな変化からのショックを受け止めて、立ち直り、さらに成長するための資質とはどんなものなのか、次回から連載の形で、答えを模索していきたい。

参考資料:佐藤隆介『池波正太郎直伝 男の心得』新潮文庫、2010年7月16日
Al Siebert, The Resiliency Advantage, Berrett-Koehler, 2005

以 上