『死ぬ前に達成すべき25の目標』追跡調査

2010/08/15 中嶋 秀隆

3年ほど前(2007年)に『死ぬ前に達成すべき25の目標』(中西全二氏と共著)という本を出版する際、男女10人の有志の方の目標を掲載させていただきました。25個ずつ10人、合計250個の目標です。このたび、4年後の追跡調査としてそれぞれの方に進捗度合いを伺いました。各目標の現状を「達成済み、進行中、中止、変更」に分類し、さらに「自由コメント、気づいたこと、具体的な工夫」を付記してもらいました。8人が文書で回答をくださっています。25個ずつ8人、合計200個の現状は、次の通りです。
達成済み 21個 (10.5%)
進行中 161個 (80.5%)
中止 4個 (2%)
変更 14個 (7%)
4年間の達成率10.5パーセントの解釈は、分かれるところかもしれませんが、比較的短期の目標を適度に織り込み、早めの達成(Early win)を重ねるのは、やる気を維持する上では大切かもしれません。
また、口頭で確認した2人を含め、合計10人の方の、具体的な目標と現状、コメントの一部を紹介します。年齢は当時(1006年秋)のものです。

20代男性
〇将来、愛すべき家族を持つ⇒「達成済み」2010年に結婚、子供もできた。
〇ユトレヒトのドーム塔を再訪する⇒「達成済み」
20代女性
〇転職か独立をする⇒「達成済み」2009年に転職した。
〇イタリアで生パスタを食べる⇒「達成済み」母と二人で。
30代男性
〇液晶TV、HDDレコーダー、2畳の書斎を入手する⇒「中止」物欲の目標は、 達成しても自分の成長ではないので、あまり意味がない。
〇地域の人にパソコンを教える⇒「進行中」さらに困っている人のためにセミ ナーを予定。
30代女性
〇シアターセットを買って「ロード・オブ・ザ・リング」の上映会をする ⇒「達成済み」65インチTVを買い、実施した。
〇自動車免許を取る⇒「達成済み」パーパー化しつつあり、身分証明に活用。
40代男性
〇いい仕事をして取材され、全国紙に載る⇒「達成済み」
〇欧州のアウトバーンを車で疾走し、スピードメーターを振り切る⇒「達成済 み」
40代男性
〇妻と家庭菜園を持ち、野菜を作る⇒「達成済み」花作り、果実作り中。
〇妻と世界遺産(エジプト、マヤ、ローマ、ギリシャ、トルコ、中国)を巡る ⇒「進行中」妻だけトルコに行った
40代女性
〇家族で韓国へ行く⇒「達成済み」2010年。
50代男性
〇1000mをふたたび泳げるようになる⇒「進行中」スポーツクラブに入り、達 成率30%(300m)
〇美味しいコーヒーを淹れられるようになる(豊かでゆっくりした生活の象徴⇒「変更」「美味しいコーヒー」の場所を発見し、空間の雰囲気( 演出)の大切さに気づいたため。
50代女性
〇88歳の父との海外旅行をもう一度実現させる⇒「達成済み」新目標を計画中。
〇ボランティア活動のリーダー研修(あと4-5年)を滞りなく終了させる ⇒「進行中」あと半年で終了。
60代女性
〇台所をリフォームする⇒「進行中」完成したら友人を呼ぶ予定。
〇東海道五十三次を完歩する⇒「達成済み」2009年6月京都三条着。その後、 新目標として「表装を趣味とし、社会に貢献する」を設定。
「自由コメント、気づいたこと、具体的な工夫」には次のようなものがあります。
・ 理想の自分に近づこうと意識できる。
・ 文書にしておくことで、忘れず、進める。
・ 細かい計画は立てず、楽しく取り組めている。
・ 中長期的な目標が多く、達成・未達を判断しにくかった。具体的な数値
目標を考えたい。
・ 当時を振り返り、「変わらない思い」を懐かしく再確認した。
・ 「自分は何歳まで生きるか?=あと何年あるのか?」に向き合った。
・ 目標をフォトフレームに入れ、見えるところに置いてある。
・ 目標の優先順位に、時間の経過による変化が強く感じられる。
・ 家族の構成や年齢の変化で、各目標にかけるエネルギーが変わる。
・ 仕事中心に生活していたが、それ以外の分野での目標を持つことにより、 生活の行動の幅が広がった。
・ 夫婦2人分の目標を額に入れて掛けている。月1回、進捗ミーティング を行うこととする。
・ 「なりたい自分」に対して何が足りないのか、もう少し掘り下げた目標 にする必要がある。
・ 段取りを考えないと進んでいきそうにない。
・ 手帳に目標を15個、書き込んでいる。

仕事の進め方や成功哲学を説く本は世の中にあふれていますし、拙著『死ぬまでに達成すべき・・・』もそ1冊にあたると思います。この種の大半の本では、著者の実体験から生まれた考え方やノウハウが紹介されています。そういう本を読んで、自分に100パーセントは合わないという理由で、活用をやめてしまう人がいますが、これは過大評価による誤謬をいわなければなりません。
こういう本で紹介されている考え方やノウハウは、著者なりの試行錯誤や検討プロセスを経て行き着いたものであり、著者が長年履きて、歩きやすい、履き心地が良いと感じている靴のようなものです。著者が履きなれた靴が読者に100合うと期待するのは、無理があります。そういう本からヒントを得ながら、それとは別に、自分で工夫や試行錯誤、検討を続け、自分なりのものを「確立」することが大切です。プロジェクト用語では、「ベースライン」にあたります。
しかし、成長はそこからも続きますし、環境もどんどん変化します。つまり、一度確立したベースラインは「刷新」し続けることが不可欠です。前項の末尾に紹介した「手帳に目標を15個、書き込んでいる」というコメントに注意したいと思います。この方は、目標の数について、拙著が説く25個より、15個の方がしっくりすると考えたようです。その人の判断が入った、立派なベースラインです。そこから刷新を続けることを期待しましょう。

大学の理工学部の先生が学生に伝えているアドバイスがあります。「大学で出されるテスト問題には、大半の場合、正解が一つある。しかし、世の中で遭遇する問題には、正解が一つとはかぎらない。複数あるかもしれない。全くないかもしれない。」これを一歩進める形で、米国の心理学者がいっています。「学校ではまず授業で学習し、そのあとでテストを受ける。しかし、〔人生という学び舎〕では、さきにテストを受け、そこから学ぶという順番になる。」(Al Siebert,The Resiliency Advantage)

まず自分の考え方や目標を確立し、一生を通じて刷新し続けたいものです。

以上