INTEGRITYという本(H,Cloud)にある、「準備しろ!ねらえ!撃て!」の紹介の第3回だ。
「準備しろ!」「ねらえ!」に続き、3回目は「撃て!」だ。「撃て!」では、実際に引き金を引くことになる。しっかり準備し、ねらいを絞ったら、弾丸を放つ。これに伴うリスクに備えていれば、恐れる必要はない。リスクは小さく押さえ込まれているからだ。ここが投資とギャンブルの違いである。ギャンブルでサイコロを振る場合、どの目が出るかについてできることはほとんどない。「なるようになる」の世界である。一方、投資のリスクにはできることがある。水に跳び込むまえに、その水には毒性はがなく、汚染されてもいないことを確認することができる。もちろん、落雷に遭うリスクが皆無とはいえないかもしれない。しかし、カナヅチの人が何の調査もしないまま知らない沼地に跳び込む場合より、痛い目に遭う確率はずっと低い。
さらにそのあとで、実際に跳び込むことができなければならない。せっかくリスクをしっかり評価しても、その段階で種を撒くことを嫌う人がいる。種を地中に埋めて自然の摂理を信ずる、ということをしない人である。種を地中に埋めたら目には見えなくなってしまう。それに今年は旱魃に見舞われるかもしれないではないか…こういう人は、種を撒くことは危険きわまりないことと考える。
リスクを引き受けて行動を起こす、相手からの拒絶を受け入れる、ビジネスの損失に対峙するなどには、成熟した人となりが前提となる。失敗する、拒絶される、反対される、予期せぬ結果に見舞われる、安全を損なう…などの恐怖が、何かを成し遂げる際、我々の障害になる。こうした恐怖を乗り越えられれば、誰もがもっと素晴らしい成果を上げることができる。
「ぶれない軸」(Integrity)のある人は、恐怖について違う姿勢で臨む。物事がうまくいなかい時に、それもまた「対処すべき新しい現実」と受け止めるのだ。こういう見方をすれば、失敗などなくなる。問題は解決できないはずはない、チャレンジを受けて立とう、前に進もう….というわけだ。
ひとかどのことを成し遂げるには、「準備しろ!ねらえ!撃て!」の3つをこの順番で行うことが不可欠であり、成熟した個人や組織は、高い水準でバランスを保ちながら、それをやっている。これがうまくできないと、「撃て!準備しろ!ねらえ!」や「ねらえ!撃て!準備しろ!」の順になったりする。さらに、バランスを失す
ると、「準備しろ!準備しろ!準備しろ!準備しろ!準備しろ!ねらえ!ねらえ!ねらえ!ねらえ!ねらえ!撃て!」となってしまう。
(3回シリーズ完)
エッセイ
「準備しろ! ねらえ! 撃て!」(その3)
2007/06/03 中嶋 秀隆